おいしい作物のつくり方

一概に野菜や果物を美味しくするといっても、漠然として分かりにくいものです。糖度であればデンプンの貯蔵率を上げる、旨味であればアミノ酸の含有率を高めるなど色々あります。ここまでは分かるのですが、ではその為にどうすればいいのか?皆さんが頭を悩ませるところでしょう。
一から順を追って考えてみましょう。

 先ず土壌に施された有機チッソは、ニトロソモナスやニトロバクターといった硝化細菌群によって無機化され、根酸によってイオン化され吸収されていきます。そして、ほとんど根の範囲で硝酸態チッソから亜硝酸、亜硝酸からヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミンからアンモニア、そしてグルタミンサイクルを行い、アミノ酸やタンパク質を合成していきます。このチッソ同化をするのに必要なエネルギーを植物は光合成によって獲得します。
 太陽の光を受けた葉緑素は、発生したエネルギーをATPという三リン酸化合物に入れ、NADPHというもので各細胞に運搬していきます。いわゆる光合成の明と暗反応ですが、このエネルギー運搬が上手くいかなかった場合、どういったことが起こるか、その一つが先ほど出て来たグルタミンサイクルにあります。
 例えば人がアミノ酸を処理能力以上に摂取するとどうなるかというと、ケトーシスといわれる代謝障害が起こり、血液がドロドロになり逆に害を及ぼします。植物も同じで、グルタミンサイクルで処理できなかったチッソは、アンモニア態となり、蓄積が続くと、植物事態にとって害となります。蟹や鮮度の悪い魚介類がアンモニア臭くなるのは、それまで浸透圧の関係で排出できないアンモニアを尿素に変換して無毒化していたものが、死んでからまたアンモニアに変わるからです。それほど生物にとって、アンモニアは都合よくありません。
都合が良くなければ当然排出する機能が働きます。処理しきれなかったチッソの一部はガス化して気孔から排出されます。そして虫を誘引させ、わざと外壁を食い破らせることで、効率よく毒素を排出しているという説もあります。一件突拍子もない説に思えますが、最近近大と山口大の研究グループが発表した内容で、トマトに発生した害虫に対し、トマト自身が殺虫物質を製造するのですが、その時の揮発性物質を他のトマトの樹が感知し、アルコールから同じ殺虫成分の物質を作りだし、一斉に拡散させて虫を一網打尽にするそうです。例えば別の研究結果では、植物は今どの部分をどの虫に食べられているのか理解し、それに見合った毒素を放出するという事が分かっています。アブラナ科の植物は青虫に食害されると、アリルイソチオシアネート(ワサビなどの辛味成分)を発生させ、寄生バチを誘引し、青虫に寄生させ殺させます。これらを他感作物質やアレロパシーと呼びますが、こういった複雑な機能を考えれば、アンモニア排出のために虫を誘引させるのも、十分に考えられる事です。そして当然食害されやすい状況ですから、他の菌も侵入しやすいでしょう。日照不足でエネルギーが不足すると、こういった状況から病気が発生していきます。
先述した通り、チッソ同化するためにはエネルギーを消費します。美味しいものを作るためには、アミノ酸やタンパク質をスムーズに合成できるように、上手くチッソが同化出来る、その樹に見合った施肥をしなければなりません。また、病気が出てしまうと、当然光合成能力は減少し、デンプンの貯蔵率は減少します。農薬散布によっても樹勢は落ちてしまいますので、チッソ同化が遅れ、悪循環してしまう可能性がありますから注意が必要です。

 病気を起こさない事と、秀品率を高めることは同じです。
植物は前述のアレロパシーなど、大変優れた抗病害虫性能を持ちます。
日照の優れた豊作時には病気は出ませんが、日照の悪い年は病気が出やすくなります。これは一次代謝で実を太らせたり生育したりするのに対し、花芽形成、糖度、着色、抗病性といったものは二次代謝となるためです。二次とは言い換えれば一次の後回し、つまりエネルギー不足に陥ると、使用できるエネルギー量が少ないために、実太りや生育にほとんどを消費してしまい、抗病性などをつかさどる、二次まで十分にエネルギーを分配できなくなります。ドカ生りして実をぶら下げすぎると、一気に病気が出だすのはこのためです。
つまり樹勢のコントロールさえ上手く行けば、農薬の散布も大幅に抑える事が出来、農薬散布によって樹勢の低下から起きる負の循環を無くすことが出来るのです。また、当然二次代謝までエネルギーを分配出来ているわけですから、花芽形成や糖度、着色など、秀品に直結する部分も優れていることになります。

 それでは美味しい野菜を作る=秀品率を高めるには何をすれば良いか

 

結論から行くと、総エネルギー量を増やすことになります。二次代謝までエネルギーを分配させる事が、アミノ酸やタンパク質の含有率を高めさせ、またデンプンの貯蔵率も高める事になります。美味しいものを作る、秀品率を高める、収量を増やす、すべて同じです。光、水、二酸化炭素は勿論ですが、土づくりをしっかりする事で細根数をふやし、エネルギーの運搬率や獲得率を高め、過剰な施肥などで負荷をかけさせないことが重要となります。

そこで、明徳農法ではこのように考えています

明徳農法

施肥設計と果樹、イチゴ、トマトそのほか野菜の実績あります。
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